東京公演を皮切りに、2024年7月14日(日)まで、全国10都市を巡る本公演についてクリエイターたちのインタビューと共に、新たなミュージカルの魅力を掘り下げます。
開幕前の稽古場で取材に答えていただいたのは、脚本・演出のジョナサン・ロックフェラーさん、日本版演出補の岸本功喜さん、翻訳の小島良太さんの3名です。
プーさんの温かい世界に癒される
ミュージカル
新作ミュージカル「ディズニー くまのプーさん」は、2021年10月にニューヨークのオフ・ブロードウェイで幕を開けました。全米ツアーやヨーロッパ各地での公演などを重ね、ついに日本初上陸。日本人キャストによる日本語版で公演されています。
物語は、プーさんがはちみつを探して100エーカーの森を冒険する中で、秋から冬、春、夏と4つの季節が移ろっていきます。約60分という上演時間で、子どもでも展開が理解しやすい作品です。アニメーションからヒントを得たオリジナルのストーリーですが、プーさんが木の穴に詰まったり、ティガーとピグレットがプー棒投げで遊んだり、ティガーがラビットの畑を荒らしたり、アニメーションでも定番のシーンがあちこちに取り入れられています。
ミュージカルということで、…
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東京公演を皮切りに、2024年7月14日(日)まで、全国10都市を巡る本公演についてクリエイターたちのインタビューと共に、新たなミュージカルの魅力を掘り下げます。
開幕前の稽古場で取材に答えていただいたのは、脚本・演出のジョナサン・ロックフェラーさん、日本版演出補の岸本功喜さん、翻訳の小島良太さんの3名です。
プーさんの温かい世界に癒される
ミュージカル
新作ミュージカル「ディズニー くまのプーさん」は、2021年10月にニューヨークのオフ・ブロードウェイで幕を開けました。全米ツアーやヨーロッパ各地での公演などを重ね、ついに日本初上陸。日本人キャストによる日本語版で公演されています。
物語は、プーさんがはちみつを探して100エーカーの森を冒険する中で、秋から冬、春、夏と4つの季節が移ろっていきます。約60分という上演時間で、子どもでも展開が理解しやすい作品です。アニメーションからヒントを得たオリジナルのストーリーですが、プーさんが木の穴に詰まったり、ティガーとピグレットがプー棒投げで遊んだり、ティガーがラビットの畑を荒らしたり、アニメーションでも定番のシーンがあちこちに取り入れられています。
ミュージカルということで、プーさんたちが歌うシーンもたくさん登場します。『くまのプーさん』の楽曲はもちろん、『ティガームービー/プーさんの贈りもの』の楽曲を歌ったり、「新くまのプーさん」のオープニング曲をBGMに使ったり、様々な作品の要素を取り入れて、音楽の観点からも100エーカーの森の世界観を作り上げています。歌詞は、どれもディズニーアニメーションの日本語吹き替え版の歌詞をそのまま使っていて、なじみのある歌を生の舞台で楽しめます。
脚本・演出を手掛けるジョナサン・ロックフェラーさんは、今回日本上演のために初来日。プーさんの物語の魅力と、ミュージカルのポイントを話していただきました。
(ジョナサン)脚本を書くにあたって、色々なプーさんの映画やアニメーション、A.A.ミルンの原作も参考にさせていただきました。すごいのは約100年前の作品が現代に受け継がれていることだと思います。
個人的に今回の作品で大好きなところは、大人が自分の思い出を楽しめる作品であるということです。もちろん大人だけじゃなくてお子さまも楽しんでいただけるのですが、家族みんなで楽しめるというところが、「くまのプーさん」のお話の大きなところなんじゃないかなと思います。
笑えるようなシーンも沢山ありますし、歌やダンスや、グッと感動するような場面もあります。
日本版演出補の岸本功喜さんと翻訳の小島良太さんは、ジョナサンの脚本を、温かい作品だと紹介。プーさんたちが生み出す100エーカーの森の温かさを、生の舞台で表現できる作品になっています。
(岸本)ジョナサンの素晴らしい人柄、暖かくスマートな感じとユーモアのバランスが、台本にも表れているなと思います。
舞台には必ずクリエイターの人柄が滲み出ると思うので、やはり作り手の人間性って改めて大事なんだなと、自分もすてきな人間であろうとジョナサンと話していて思いました。
ジョナサンという作り手を知ることができてこの作品がより好きになりました。
(小島)ジョナサンが作り上げた台本の世界観というのが、ものすごく温かいもので。
面白かったり感動したりするポイントがあるのですが、その温かい空気感と日本語の柔らかい語感がすごくマッチするなというのは、台本を翻訳していて思いました。
パペットミュージカルは
「舞台で表現するアニメーション」
新作ミュージカル「ディズニー くまのプーさん」の大きな特徴は、パペットを用いた作品であることです。
プーさんと100エーカーの森の仲間たちはパペットで登場し、パペットの後ろでキャストが操演しています。操演しているキャスト自身が声を出して演技をします。
ジョナサンさんは、これまで数々の作品でパペットのミュージカルを制作してきた、パペットミュージカルのプロフェッショナル。彼にパペットミュージカルの特徴を伺いました。
(ジョナサン)パペットを使ったミュージカルで一番特徴的なところは、登場人物がアニメーションから飛び出してきたそのものに一番近い形で表現することができることです。
現実世界でキャラクターたちを間近で見るという特別な体験をすることができ、「舞台で表現するアニメーション」という風に言ったりします。
見ていただきたいのは、パペットを操作する演者たちが、パペットに命を吹き込んでいくというところ。それが成功した時には、パペット操者の存在が気にならなくなり、パペットだけが存在するように見えます。
パペットミュージカルは「舞台で表現するアニメーション」だというジョナサンさん。
本作でも、ピグレットが風で飛ばされる様子など、人間が演技するのでは真似できない、パペットならではの表現方法を使えることで、アニメーションでお馴染みのシーンを再現しています。イーヨーの歩き方なども、アニメーションからそのまま飛び出してきたみたいです。登場人物たちの動きや会話を見ているうちに、操演キャストの存在を忘れて、プーさんたちが命を持って動いているように思えてきます。
さらに、パペットの作りにもこだわりがあります。
プーさんはキャストの胸くらいまでの身長がある一方、ピグレットはキャストが膝をついてパペットを持つサイズ感。パペットを使うことで、プーさんたちのサイズもリアルに表現されています。
プーさんたちは元々ぬいぐるみなので、パペットで表現することとの相性は抜群です。本作ではクリストファー・ロビンは人間のキャストが演じますが、ぬいぐるみではなく動物であるラビットやオウルもパペットで登場します。
プーさんたちぬいぐるみと、ラビットたち動物、どちらもパペットで表現することについて、ジョナサンさんは「アニメーションとの親和性も保ちながら、本で読むと実際の動物たちが出てくるというところがリアルに見えるような良いバランスをすごく考えました」と制作当時を振り返ります。
(ジョナサン)プーさんはいわゆるぬいぐるみ的な素材で作っているのですが、ラビットはよりリアルな素材で作っています。ラビットとオウルは演出的にも、「自分たちだけが考えることができて頭が良いんだぞ」と思っています。
セリフの中で、オウルが「頭脳があるのは私かラビットくらいだ。他のやつは頭にワタが入っているだけじゃ」というくだりがあって、それはジョークとしても受け取れるし、実際オウルとラビット以外はぬいぐるみだという隠れたメッセージにもなっています。
(小島)やはり初めてプーさんが舞台に登場する時、子どもたちにとっては衝撃なのではないかと思います。アニメーションを家で見るのとは全然違う感覚というか。プーさんたちは元々クリストファー・ロビンが持っているぬいぐるみで、クリストファー・ロビンの想像の世界で100エーカーの森はできていますが、ステージでそのプーさんと仲間たちを見ると、私たちもぬいぐるみたちと一緒に冒険しているような気持ちになります。
プーさんが主題歌にのせて登場すると、その可愛らしい動きに、一気に100エーカーの森の世界へと引き込まれてしまいます。
VIB(Very Important Bear)席の観客は、終演後にランダムで2名の登場人物と一緒に写真撮影ができます。ふわふわで可愛いパペットと間近に会える貴重な機会です。
言葉が分からない子どもから楽しめる
子どもでも親しみやすいパペットショーは、子どものミュージカルデビューにも最適です。プーたちは基本的に簡単な言葉しか使いませんし、歌も誰もが好きになる音楽で、子どもにも優しい作品です。
ジョナサンさんは、さらに言葉が分からないような小さな子どもでも楽しめるミュージカルだと語ります。
(ジョナサン)このショーは、小さなお子さまで言葉がまだわからないとしても、ストーリーと登場人物を見るだけですぐにショーの中に入っていけるというのが、1番のポイントではないかと思っています。
(岸本)僕たちも0歳からご観劇可能なミュージカルをこれまでにもたくさんつくらせていただいていますが、生の舞台は目の前でドラマが起きるので、言葉を覚えることを含めて人の心を育てるのにとても役立つんじゃないかなと思うんです。
ディズニーの作品はどの世代で見ても楽しめるよう本当に巧みに作られていて、この作品も小さなお子さまには感性を大いに育むような、そして同時に何かを失って疲弊した大人には、もう一度すてきなピュアな心を戻してくれる。
誰にとっても何かを受け取れるものがある素晴らしい作品になっているなと改めて思います。
一緒に歌ったり
コスプレをしたりして楽しんで
最後に、ディズニー・カードクラブの読者に向けてメッセージをいただきました。
(ジョナサン)ディズニーやプーさんがお好きであれば、お馴染みの歌がたくさんショーの中で歌われますので、恥ずかしかったら心の中で歌ってもいいですし、実際にショーの中で歌っていただいてもすごく楽しめると思います。
物語は秋から始まるのですが、最後のところでちょっと泣けるような場面もあるので、大人の皆さんにも響くのではないかなと思います。
スーパーディズニーファンの方々は、ワンポイントでもいいので、グッズを身に着けたり、作品をイメージしたファッションでいらしても楽しめるのではないかなと思います。
(小島)目の前でぬいぐるみが動いて喋って歌って踊っているわけですが、実際にそれを見ると本当に可愛いんです。
我々も初めて稽古場で見た時に衝撃だったので、舞台空間でショーアップされて動くのを目の前で見るとそれだけで感動なのではないかなって。
プーさんや仲間たちが好きなお客さんだったら、より愛着を感じてもらえると思います。そのように目だけでも楽しめますが、シャーマンブラザーズの曲を効果的に使った音楽も本当に素晴らしいです!どちらもお楽しみいただけたら!
(岸本)一見、お子さま向けのショーとして思われがちなのですが、お子さまの心を育む素晴らしいショーです。1時間の中にとてもすてきな仕掛けが散りばめられているので、お子さまの心を育むだけではなく、大人の方にも100%楽しんでいただける素晴らしいショーだと思います。
日本の第一線で活躍している素晴らしいキャストと共にショーをお届けできるのが楽しみです。
お子さま向けかなと悩まれている方もぜひ一度足を運んでいただけたら幸いです。
(ジョナサン)大きなミュージカルを観に行かれる方も多いと思いますが、このミュージカルはすごく小さくて近くにプーさんと仲間たちが来てくれる感じで、親近感を持てるショーだと思います。
初めてミュージカルを観劇するという方はもちろん、初めてプーさんの物語に触れるという方にも、プーさんの温かくてじんわり心に響く世界観に引き込んでくれる作品です。
ディズニーマニア、プーさんファンには、お馴染みのシーンや曲が詰まった心地の良い舞台。プーたちが四季を過ごすように、1時間の舞台ももっと長く感じられます。
プーさんたちが生の演技と歌で動き回る、この作品でしか経験できない体験が待っています。
ぜひ劇場に広がる100エーカーの森へ、プーさんと仲間たちに会いに来てください。
撮影/鈴木健太 林田周也